校長先生と友達なので、
校長室へ遊びに行く。
人の気分をよく見ないので、
校長の苦労はよく判らない。
校長先生の仕事はパン屋で、
パン屋の仕事はよく判らない。
校長室の東の壁には書棚に挟まれて竃があり、
竃の中には高速道路があり、
校長先生の高速道路は、
いつも暗くて電灯が要る。
真夏の昼休みに電話をかけてドライブをせがみ、
汗の背中で竈に乗り込み、
真暗い高速道を校長の運転が進んで行く。
ヘッドライトが三角を作る、
夜の高速で一番暗いのは木で、
次に暗いのが車内だった。
次に暗いのが行く道の先で、
暗ければ暗いほどそこは死にやすい。
竃の奥は高速道路に見えるが、
竃の先は排気孔かも知れず、
きっとどこかのトンネルを抜けるとその先は煙突の向こうの曇る空に繋がっているやも知れず、
きっとこのトンネルを抜けるとこの高速道路は短くなっているかも知れず、
夜に見えるのは煤、木に見えるのは影、
ライトは炎シートはパンキジ、
校長先生に思えたものは気のせいできっと存在しなくって、
校長先生と遊びたい気持ちは真夏の昼休みの竃の炎の奥の夜の高速道のヘッドライトに一瞬浮かぶような眠気の見間違いで、
何をそんなに必死になって電話までして見間違えたかはよく判らない。
人の気持ちを変えるようなとやかくもよく判らないので、
先生の気持ちもよく判らない。