大きな休みに入る前に、
病院へ行って薬をもらって来る。
病院はいつも混んでいて、病院と呼んでいるが医院で、
明治が小さいころからかかりつけで、周りも親子が多かった。
子供の中でいつまでも終わらぬ本を読んでいると、
知った名前が呼ばれて聞こえ、
顔を上げると高校の同級生チョコ子さんが上着を抱え診察室へ入るのが見えた。
チョコ子さんでも病院に来るんだなと明治は思ったが、ずいぶんな感想ではあり、
すぐに出てきたチョコ子さんは会計も終えて出て行ってしまった。
明治はチョコ子さんに病院に行くこともあるという設定を加え、
頭の中で動かすと苦み深みでも出た気がし、
人物に深みの出たチョコ子さんは面倒くさくは思えて、
結局チョコは甘いもので感じた味は隠しということにした。

小さい頃から診てもらっている先生は今はもう随分なおばあさんで、
今日も疲れて見える相手に明治は自分の具合を話した。
先生が健康に見えなくなってひさしいが、
それだけの話ではあり、
予約を入れるたびにおばあさん先生を倒しに行くような節も覚えるがそこまで行くと理屈もなく、
ライブに行くとバンドに悪いことしてる気がする程度の単純さだったが、
泣いている子を見るとここのがきんちょらそのうちみな死ぬんだな、
お母さんも自分のこと出来なくなんだな、
チョコ子さんもバンドマンも病院の先生も死ぬには死ぬが、
書かれて読めてもそういうことは馬鹿な明治が今日まで読んでいた本では行間で、
見えてあるのが判っていても、判ってなくてもよしにはできて、
きっとこれからも自分でチョコは作らないし、
もしこの一生を話して聞かせるとしても、
ただ、行間が増えるほど読むのは大変になっていくので、
もっと難しい本も生きるにはいるのだなと、明治はそういう理屈で思う。

処方箋をもらい薬局に行き説明を聞いて明治は薬を買った。
もう何年も飲んでいる薬だった。
自分以外の人もこの薬を飲んでいるんだなとふと思ったが、
義理チョコだとは思わなかった。

f:id:AMF:20100206063310g:plain