お兄ちゃんのレバーから砂糖が採れて、
それで商売になりうちからニートがいなくなった(虹色)。
砂糖はショ糖でウッドウォーカーの戦隊が試合に使う公式糖分だった。
提携にうちは裕福になり、
私は自分の部屋と大きいvaioのデスクトップを手に入れた。
一人の部屋の網戸の窓の、夜の風の匂いに裏山の雑木の夢と苛立ちが混ざって、
長ズボンの形に搾られたお兄ちゃんはipodの沼に落ち、そのまま浮かんでこなかった。


お兄ちゃんと私は以前酷い喧嘩をしたことがあり、
飼っていた犬の失明の原因が私に濡れ衣された時、
本当の犯人はお兄ちゃんで、旅行鞄で犬を轢いたせいだった。
あれから兄は古典の漫画しか読まなくなり、肝臓にシュガーが貯まりだしたのだった。
裏山の雑木林からウッドウォーカーの装備の音が聞こえ、
林道の奥のipodの沼では恋と鳥の水音がエンドレスリピートされている。


大人になり私も東京や東京以外に住まいを移したが、
時々帰ってくると娘や娘以外と狭い雑木道を手を繋ぎ歩く。
敷かれたウォークマン腐葉土の音で鳴り、キジバトの真似をゼンがしている。
姿の見えない森生まれの製品が勇気をくれ、
ロボトミーされ行儀のよくなった娘に私は兄の話を聞かせた。
「お兄ちゃんはいつも私と遊んでくれて、
置き去りにされるのもこんな小道だった」
「お母さんお兄ちゃんは本当にこの森にいるの」
「もう少し歩こう」
ウッドウォーカーも今は滅び、
ipodの沼は今は涸れていて、
跡には落雷した時計塔が黒く焦げて立つばかりだった。
次善と娘をそこに縛り付けると、
私は一人雑木道を戻った。
誰もいない道を唄って帰ると、
風の音がランダムに兄の悲鳴を流し始めた。